と思ってから、ずいぶん時間が過ぎました。右腕の痺れと握力の低下で、ピッキングがうまくできません。それならと、指で弾こうとしても思うように力が入らず、強弱がつけられません。ぼくの専門ですが、頚椎性の神経症状とはやっかいなものです。しかも治せないから情けない(苦笑)。
それでもっぱらギターを磨いているんですが、これじゃぁ腕は磨けません。それで、ギターでどんな曲を弾こうか、最初はボサノヴァにしようかなんて思い、アコースティック・ギターを出したんですが、弦がボロボロで、現在知人に頼んで「これは」というやつを調達中です。それと、ちょっと試しにボサノヴァを弾いてみたんですが、親指のしびれが強いのでベース・ランニングが思うように弾けません。というか、それ以前にほとんどギターが弾けないほど腕がさびついていましたが。
トップの写真は1967年ごろに買った手作りのクラシック・ギターです。小学校の3年生から5年間本格的にクラシック・ギターを習い、その後にボサノヴァにはまった時期があり、小遣いと親の援助で、当時としては相当いいギター(これのこと)を買ったのが高校2年のとき。そのころはフォーク・バンドもやっていたので、そちらでも活用しました。
大学に入ってからボサノヴァの弾き語りやジャズのバンドでもボサノヴァを弾くことがけっこうあったので重宝しました。自分でメンテナンスをして、そのあと友人が調達してくれる弦を張ろうと思っているので、現在は弦を外しています。
ジャズ・ギターは大学の入学祝いにヤマハのギターを買ってもらい、それから本格的に始めました。しかし根っからの凝り性なので、すぐに物足りなくなりました。そういうわけで、バンドで稼いだお金をすべて注ぎ込み中古で買ったのがこのGibsonのD-175。1971年のことで、このモデルは1960年代初頭に作られたものだそうです。
いまではヴィンテージ・ギターなんでしょうが、当時はただの中古でした。でもさすがにギブソン。ぼくのへたくそな腕前でもいい音を出してくれました。
不思議なもので、いいギターを持つと仕事のお呼びもいろいろとかかってきます。それで今度はそのお金を貯めて、憧れのFender Twin Reverveを買いました。GibsonのギターとFenderのアンプ。これでケニー・バレルにも負けない道具が揃ったんですが、ギターはうまくなりません。当たり前の話ですが。
のちに音楽の仕事をすることになって、ケニー・バレルにインタヴューしたときです。ギターとアンプのコントロール(ヴォリュームなどの目盛りをどのくらいにするかとか)を教えてもらい、家でその通りにやってみたのですが、やはりケニー・バレルの音は出ません。
後日その話をしたら、「君は整形外科医だから、わたしが死んだら、わたしの指を移植するといいよ」といわれました。ですから、指折り数えてその日が来るのを待ってます(嘘です!)。
中学のころからやっていたロックも、大学になって本気になりました。ジャズでもあちこちで演奏していたんですが、ロックもいくつかのバンドを掛け持ちして、中には相当イケてるバンドもありました。
そのバンドでオーディションを受けまくり、ライヴ・ハウスやディスコに出ていたのが21~22歳のころ。あのころは若くて夢もいろいろあって、楽しい時代でした。レコードを出す話もあったんですよ。
それで買ったのがFenbder Telecaster。当時は(いまもそうでしょうが)FenderならStratcasterが主流でした。このMaple Neckモデルを買ったのは、大好きなスティーヴ・クロッパーが使っていたからです。彼はこのギターとFender Twin Reverveの組み合わせを使っていました。でもケニー・バレルのときと同じで、スタックスのギター・サウンドはやはり出なかったですね。
最後のこのGibson。これは凄いです。医者になって2年目のころでしょうか。もう、ずいぶん前にギタリストの道は諦めていたのですが、ある雑誌でエリック・クラプトンのギターをコレクションしているひとの紹介記事を読み、胸が騒ぎました。何本かは売ってもいいと書いてあたったので、急にほしくなって、そのひとから譲り受けたギターです。というわけで、これはクラプトンが弾いていたギターです。
これ、昔のポルシェと同じで扱いずらいです。いまはぜんぜん楽になりましたが、古いポルシェはクラッチが固くて、運転していて足がつったことが何度かあります。このGibsonも弦の張りが強いというのでしょうか、とにかくかなり力を入れて押さえないと綺麗な音が出ません。そのかわりうまく弾ければ本当にいい音がします。それだけに、このギターに合う弦を探すのがなかなか大変なので、これも目下調達中です。
このギターは、医者になりたてでほとんど毎晩のように当直をしていたぼくのよき相棒でした。急患の処置をしたあと、ほっとひと息ついたときなんかに、それこそクラプトン気取りでブルースなんかを弾いていました。
緊急の手術で、準備が整うまでの時間、気持ちを落ち着かせるために弾いていたこともあります。このギターがあったから当直も辛くなかった。そんな恩のあるギターに、ぼくは不義理をしていました。これからはその分も含めて可愛がってあげなくては。
そういうわけで、昔、弾いていたギターが4本、手元にあります。長いこと手入れをしていなかったので、それぞれがいまのところいい音で鳴ってくれません。こちらの手の障害もあるので、リハビリを兼ねて少しずつ弾いていこうと思っています。