小曽根真さん率いるオーケストラを17日に観てきました。とにかく素晴らしかった。ビッグ・バンドの迫力ある演奏によって、ラテン・ジャズならではの熱気と陽気さが楽しめたライヴとでもいえばいいでしょうか。新作『Jungle』で聴かせてくれたラテン・ジャズの醍醐味を、目の前で繰り広げられる熱い演奏のお蔭でいっそう身近に感じられた一夜でした。
このアルバムについて、小曽根さんとオーケストラの番頭的存在であるエリック宮城さんにインタヴューしたときです。レコーディングが終わった直後ということもあって、ふたりは興奮冷めやらぬ口調で、今回の作品について話してくれました。その内容通りの楽しく、かつチャレンジ精神に溢れた演奏が「ブルーノート東京」のステージでは最初から最後まで繰り広げられました。
なにせ日本を代表するプレイヤーの集団です。全員がバンド・リーダーになってもおかしくないメンバーをひとつにまとめるのは大変なことでしょう。しかしそこは小曽根さんの人柄と抜きん出た音楽性が解決しているようです。エリックさんのサポートも大きいと思われます。
こんなに楽しそうに演奏しているオーケストラって、ぼくは観たことありません。しかもやっている音楽は難易度がとても高いものです。それを「ここまでやらせる気?」とか「おお、そう来たか!」みたいな感じで、メンバー同士がやりとりをしていきます。
お店のひとが配慮してくれたのか、ありがたいことに小曽根さんのすぐそばでぼくは観ることができました。それだけに、彼の呼吸やうなり声や笑い声など、音楽以外のさまざまなものが聞き取れたり、目にしたりすることができました。
ときには「してやったり」といった顔をしてみたり、またあるときんは「やられた!」といった表情を浮かべながらメンバーにニヤリと笑顔を送ったりと、その場で創造的な音楽が作られていく様をしっかりと見届けることができた1時間強は、ぼくにとってまたとない経験になるでしょう。
演奏の素晴らしさと楽しさもさることながら、小曽根さんのMCも最高です。これまた彼の人柄がよく出ていたというか、関西人ならではのサーヴィス精神が旺盛で、おおいに笑わせてもらいました。当意即妙の受け答えも、「お見事!」のひとことです。演奏も喋りも最初から全開で、CDを聴いて楽しむのとはまったく別種のエンタテインメント、それも極めて上質、かつ誰もが楽しめるステージが満喫できました。
上質で誰もが楽しめるエンタテインメントってありそうで、実際はなかなか遭遇できるものじゃありません。ところがNo Name Horsesは、今回に限りませんが、クリエイティヴィティをとことん追求しながら、聴くひとも演奏しているひとも心から楽しめるオーケストラになっています。
やっていることは本当に高度なことばかりです。すべてがチャレンジといっていいかもしれません。それを真剣にやっているにもかかわらず、ミュージシャンの顔つきや立ち居振る舞いから、喜び、楽しみ、満足といったものが感じられます。それが客席にストレートに伝わってくるんでしょうね。
この素晴らしいミュージシャンたちと一緒に音楽を創ることの幸せを皆さんに感じてほしい! This is definitely the BAND!!!──小曽根真
この言葉がすべてを物語っています。