銀座のこぢんまりとしたバー「le sept」でのイヴェントも昨日で3回目を迎えることができました。毎回このイヴェントを主催してくださっている有志のみなさんやお店の則子ママにはお世話になりっぱなしで、昨日も楽しい時間が過ごせました。飛び石連休の合間にもかかわらず、集まっていただいた皆さん、ありがとうございました。
いまごろは書店に並び始めていると思いますが、今回は全音楽譜出版社から発刊した『スタンダード・ジャズのすべて 大事典』に合わせて、スタンダード特集、それも大好きなマイルス・デイヴィスこだわって選曲をしました。
たまたま9月から今月にかけて、毎月10枚、ソニーからマイルスのアルバムが紙ジャケット化されて発売されたこともあり、その中から曲を選ぶことにしました。ソニーのマイルスに関しては、これまでに何度か紙ジャケ化が行なわれています。しかし、今回は紙ジャケットの出来が一番いいんですね。オリジナルの帯や内袋も再現しましたし、音に関してもしばらく前にぼくが監修したアナログ盤20枚セットを発売する際に行なったマスタリングがかなり使われています。というわけで、好みはそれぞれあるでしょうが、音質的にもぼくとしては納得のいくものになっています。
それでスタンダードですから、このような曲をみなさんと聴きました。
1.'Round About Midnight from「'Round About Midnight」
2.Lament from「Miles Ahead」
3.Milestones from「Milestones」
4.Stella By Starlight from「1958 Miles」
5.I Loves You, Porgy from「Porgy And Bess」
6.Blue In Green from「Kind Of Blue」
7.Concierto De Aranjuez from「Sketches Of Spain」
8.Someday My Prince Will Come from「Someday My Prince Will Come」
9.I Fall In Love Too Easily from「Seven Steps To Heaven」
10.My Funny Valentine from「Miles In Tokyo」
一部マイルスのオリジナルも含まれていますが、ジャズ・ファンならすべてお馴染みの曲ばかりでしょう。というわけで、「スタンダード」としたんですが、ちょっとバラードが多かったかな? という印象も持ちました。お集まりいただいた皆さんには楽しんでいただけたでしょうか?
2時間のイヴェントですから、これらの曲を聴きながら、マイルスに関する与太話をしていくわけですね。相変わらずの脱線振りで、話の内容をご理解していただけたかどうか不安ですが、終わってしまったものは仕方がありません。ぼくもマイルスと同じ照れ屋の性分なもので、話が妙な方向に進んでいくのも照れ隠しのひとつだと思ってください。
それはそれとして、やっぱりマイルスは別格ですね。これほど豊かな表現力と説得力を持つプレイヤーはほかにいません。そのことを昨日も強く感じていました。テクニックだけならもっとうまいひともたくさんいます。それでも、マイルスにはそういうひとより聴くものの心を掴む何かがあるんじゃないでしょうか。理由はいろいろ考えられるんですが、結局はヒューマンな暖かさに尽きると思います。
マイルスの演奏は「クール」とよく形容されます。熱い演奏とは違って、醒めているところが持ち味です。それを含めて、マイルスの演奏はとても人間味に溢れたものに聴こえます。それは、ぼくがたまたま彼の知己を得て、その優しさに触れたことで、勝手にそう感じているのかもしれません。
でも、ぼくはそれ以前からマイルスの音楽に心を揺さぶられてきました。心の襞の隙間にそうっと入り込んで、冷え切った気持ちや、やるせない思いを慰めてもらったことが何度もあります。浮き浮きしているときは、その気持ちをもっと盛り上げてもくれました。
音楽は個人的な思い入れで聴く要素が非常に強いものです。みなさんが同じ体験をするとは思いませんが、マイルスでそういう気分を味わったことがあるひとは結構いるんじゃないでしょうか? 音楽の持つ力は偉大だと思います。音楽にすべてを委ねるつもりなんてまったくありませんが、それでも音楽は裏切らないなぁと思ったことは再三です。
多分、ぼくはこの世の中からマイルスの音楽がなくなったって、その代わりのものは探せるでしょう。その程度のものなんです。自分にとっては大切なものであっても、あまり過大な期待はしません。
マイルスに限らず、どんなものだってなければないで生きていけます。マイルスを聴きながら妙なことを考えていたものです。今日は、ちょっとへそ曲がりの気分なのかもしれませんね。
最後にひとつ宣伝です。今度の土曜日に次のHI-FIが開催されます。26回目の今回は90年代特集ということですが、ぼくのテーマはいつものように「踊れるものなら踊ってみろ」です。何が飛び出すか? たいしたものは飛び出しません(苦笑)。ぼくの受け持ち時間は23:30から30分です。終電車に間に合います。
また今回のゲストにはフランスからフィリップ氏、CLUB BAGSY(
http://sound.jp/bagsy/)の人気DJムラカミ ダイスケを迎え、VJにはharax(
http://harax.jugem.cc/)をフィーチャーするそうです。ぼくより他のメンバーやこちらに期待してください。
【DATE】12/2(sat)
【PLACE】 @Shibuya PLUG(
http://www.shibuya-plug.tv/)
【TIME】23:00-05:00
【CHARGE】1500yen