前回のブログで肝心なことを書き忘れていました。新刊の『ジャズ・マンはこう聴いた! 珠玉のJAZZ名盤100』ですが、小僧comの小僧booksでぼくのサイン本が買えます。詳細は
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と宣伝をしたところで、本日の本題です。おとといの17日に、南青山の「Body & Soul」でチンさん(鈴木良雄さん)のライヴを観てきました。発売されたばかりの新作『フォー・ユー』と同じピアノ・トリオによるライヴです。
チンさんとは縁あって、ニューヨークに留学したときに知り合いました。当時の彼はアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズを辞めて、自分のグループ「Matsuri」を結成したり、ジャズ・メッセンジャーズ時代の同僚だったジュニア・クックやロニー・マシューズのバンドなどで活躍していました。
知り合ったのは、ジュニア・クックのグループで「ジャズ・フォーラム」に出ていたときです。やはりそのバンドにいたボブ・バーグが、「同じ日本人だろ」とかなんとか言って紹介してくれました。外国人に日本のひとを紹介されるっていうのもおかしなシチュエーションですが、それがきっかけでニューヨーク時代は家族づきあいをさせてもらう間柄になりました。
チンさんは、厳しい競争社会のニューヨークにあって、信じられないくらい穏やかでいいひとでした。ひとが良すぎてミュージシャンには向かないのでは? と心配になるほどで、だからこちらは何とか応援したい気持ちになってしまいます。
といっても、ぼくなんかお役に立てるわけではありません。チンさんは日本のトップ・ベーシストとして、デビュー直後から40年近くにわたって実力と人気を維持してきたほとですから。そういうわけで、『フォー・ユー』のライナーノーツを書かせていただきましたが、「足をひっぱっちゃわるいなぁ」という気持ちが先立ちました。でも、嬉しかったです。
そもそもこのトリオ、チンさんが前から太鼓判を押していた若手ピアニストの海野雅威さんをフィーチャー(ドラムスはセシル・モンロー)して、昨年ニューヨークでレコーディングしてきたものです。去年の5月、チンさんはこのトリオにフルートの井上信平さんを加えたグループで「JVCジャズ・フェスティヴァル」の一環として人気クラブの「Sweet Rhythm」に出演しました。ここは以前「Sweet Basil」として営業していたジャズ・クラブです。そのライヴ終了後に、チンさんの盟友でギタリストの増尾好秋さんがオーナーのThe Studioでレコーディングしたのが『フォー・ユー』でした。
「Body & Soul」ではそのアルバムからの曲が中心に演奏されました。「スーン」「トリステ」「アイシュッド・ケア」などなど。海野さんのピアノを中心にしたトリオは、バックからチンさんとセシルががっちりと支えていて、いい感じでした。チンさんは相変わらずアコースティックなサウンドを大切にしていて、聴いていて心が和みます。
ステージ終了後に海野さんとも少しお話をしたんですが、彼は10月からニューヨークで武者修行をするとのことでした。ぼくも10月にはニューヨークに行くのでタイミングが合えば向こうでも会えますね、なんていうとりとめのない話をしただけですが、チンさんと同じでほんわかしたパーソナリティがとてもいい感じでした。
帰りしな、入り口のところに座っていたチンさんの奥さんとも久しぶりにお会いできて懐かしかったです。何年か前に、頼まれて息子さんの健康診断書を書いたことがあります。そのとき以来でしたが、お元気そうで何より。立ち話でしたが、ニューヨーク時代のことをふたりしてちょっと懐かしく思いました。
店を出たのは12時近くだったんですが、渋谷まで歩くことにしました。このままタクシーに乗って帰るのは何だかもったいない気がしたんですね。チンさん夫妻や久々に会った音楽関係のひとたちとの会話が楽しかったこと、そして何よりトリオの演奏が心地よかったことを、もう一度心の中で味わいながら、同行してくれたgomezとふたりで渋谷まで歩きました。
そうそう、ぼくはウイングスという音楽関係の会社を作っています。この会社名、仲間はポール・マッカートニーのウイングスから拝借したと思っているようですが、実をいえばチンさんのオリジナル「ウイングス」から取ったものです。