おとといの月曜日、渋谷の「オーチャード・ホール」でThe Real Groupなるスウェーデンのアカペラ・グループを観てきました。女性ふたりに男性3人の5人組です。アカペラ・グループで男女混声というのは珍しいんじゃないでしょうか。
ぼくはアカペラも大好きで、アカペラと聞けばとりあえずチェックしてみようかな、と思います。最初に好きになったのは、パースエイションズです。リズム&グループのアカペラ・コーラスですね。留学中に、グリニッチ・ヴィレッジの「ビター・エンド」で観れたときは大感激しました。
ジャズではシンガーズ・アンリミテッドも好きです。日本でもアカペラ・コーラスのグループはたくさんあるようですが、基本的にはソウル系が好きです。ドゥー・ワップとかが好きだったからでしょう。
そういえばこれも留学中の話ですが、毎週、土曜の夜になるとワシントン・スクエアで歌っていた黒人のアカペラ・グループがいました。10代半ばから後半くらいの少年たちが、コースターズやシャネルズ(日本のグループではありません)なんかのカヴァーをアカペラで歌っていたんですね。
これがとにかく最高にうまくてかっこいい。すぐ話題になって、沢山のひとが集まるようになりました。ひと夏だけで消えてしまったんですが、彼らはなんだったんでしょう? 日本に連れてきたら、大人気になったこと間違いなしです。
それでThe Real Groupです。こちらはソウルフルな要素はほとんどありません。ジャズやポップス、あとはスウェーデンの民謡やメンバーのオリジナルがレパートリーです。「アイ・ネヴァー・フォール・イン・ラヴ・アゲイン」、「スイングしなけりゃ意味ないね」、「ABBAメドレー」とか、あくまで健康的で明るいコーラスが心地よく響きます。
明るいのは、彼らが健康的な雰囲気を持っているからでしょう。どこかメランコリックな印象を覚える歌でも、グループの手にかかると清々しい曲になります。そこを楽しんできました。
ひとつだけ、物足りなく感じたのは、ほとんどの曲が、ソロ対コーラスみたいなアレンジになっていたことです。せっかっく5人のメンバーがいるんですから、もう少しさまざまな組み合わせのコーラスをメロディ・パートで楽しみたかったところです。
このメロディを彼らがオープン・ハーモニーで歌ったらどうなるだろう? とか、ここは女性ふたりの掛け合いにしたら面白いんじゃないだろうか? とか、男女ふたりでハーモニーをつけてもいいよね、みたいなことをあちこちの局面で思いました。
不勉強でしたが、このグループ、こんなに人気があるというか注目されているとは知りませんでした。「オーチャード・ホール」でコンサートを開くほどですから、かなりのものです。とくにアジアで高い人気を誇っているようで、日本で知られるようになったのは2005年にコンピレーションの『In The Middle Of Life』が発売されてからです。
今回は「スウェーデン・グラミー賞」を受賞した最新作『Commonly Unique』の日本発売に合わせての来日です。1984年にグループは結成されました。1995年にはアカペラ団体のCASAから「The World's Best Vocal Group賞」を受賞し、2002年の日韓共催ワールドカップの開会式で国家を歌ったそうですが、残念ながら記憶にありません。
驚いたのは、会場入り口にある招待や関係者用の窓口が長蛇の列になっていたことです。こんなに長い列を見たことはありません。それだけ業界や関係者の間で注目を集めているのでしょう。
招待された身でこう書くのは気が引けますが、チケットを買ったひとがこの列を見たら、「これって何よ」みたいに感じるひとがいたかもしれません。主催者側からすれば仕方のないことでしょうし、そもそも呼ばれてこんなことを書くのはルール違反でしょうが。
それはそれとして、コンサートはよかったです。ロックやジャズとは違い、ひたすらエンターテインメントに徹したステージは楽しいものです。聴衆に媚びるようなところがあると嫌ですが、彼らはサーヴィス精神というよりホスピタリティを重視しているように感じました。
「おもてなしの心」ですね。過剰なサーヴィスはどんなときでも鼻につきますが、そういうところがまったくなく、聴いていてとてもいい気分になれました。できれば、次回はもう少し小さな会場で見たいものです。でもこの成功で、ますますそういうことからは遠ざかってしまうかもしれません。もっと早くに彼らの存在に気がついていればよかったです。