今年最後の単行本となる『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100』が河出書房新社から発売になりました。『名盤100』3部作の3冊目です。1年半弱の間に3冊が出せたことに、いろいろな意味で感謝しています。
今回は、これまでの2冊と違い、少しマニアックな選曲にしてみました。とはいっても、大半はちょっとしたファンなら知っているアルバムばかりです。誰も知らない作品を紹介する趣旨ではありません。「知っているけど、まだ聴いてないなぁ」とか、「そのうち聴かなくちゃ」と思われているような作品を選んでみました。
以下は【はじめに】からの一節です。
すべては1984年から『スイングジャーナル』誌で始めた連載「アイ・ラヴ・ジャズ・テスト」が出発点だ。当初は1年も続けばいいだろうと気楽に考えていた。ところが気がついたら20年近く、ほとんど毎月のようにミュージシャンをゲストに招いて「ブラインドフォールド・テスト」と呼ばれるミュージシャン名を当てるクイズで楽しんだのである。
昨年8月に出版した『ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤 100』はそれらを編集しなおし、アルバム単位でまとめたものだった。そしてありがたいことに、その続編となる『ジャズマンはこう聴いた! 珠玉のJAZZ名盤 100』も今年の5月に出版することができた。
本のタイトルが紛らわしいが、この「テスト」は、ぼくが勝手に選んだアルバムなり演奏なりをゲストに聴いてもらい、それが誰かを当ててもらう趣向である。ゲストが選んだものでないことをお断りしておきたい。
こちらも、最初は遠慮気味だった。失礼があってはいけないし、妙な演奏は聴かせられない。事前にさまざまな思いが交錯して、たいていの場合、次のようなセレクションになった。
まずは絶対に当てられるものをかけて、気分よく「テスト」に参加してもらう。その後は、本人が参加しているもの、影響を受けたアーティスト、あるいは共演したことのあるアーティストといった選択肢から何枚かを選ぶ。それで機嫌がよかったり乗り気な様子が認められたときは、ぼくがゲストからコメントを聞きたいアーティストなりアルバムなりを取り出す。
ところが名盤ばかりを聴いていても面白くない。ぼくは昔からそう思ってきた。自分しか評価していなくたっていいじゃないか。ジャズを何年も聴いてくると、多かれ少なかれそういう風に思うようになってくる。これはぼくだけでないはずだ。
そういうわけで、最初こそ遠慮があったものの、どちらかといえば調子に乗りやすいぼくは、ミスマッチと思われる演奏や一般には知られていない作品も、毎回ではないがかなり多くのゲストに聴いてもらっている。とはいっても、誰も知らない作品やミュージシャンは論外だ。結局は、これらも名盤の範疇に入るが、真っ先に買うべきアルバムとは違う。3番目とか4番目あたりに位置するもの、それらについてのコメントをまとめたのが本書である。
「こんなの珍しくもなんともないじゃないか」
そんな声も聞こえてきそうだが、これまでの2冊で紹介したアルバムに比べると、優先順位が少しは低いものが大半だと思う。それでも、これらはこれまでの200枚に比べてなんら内容に遜色がない。過小評価されているアルバムや見落とされがちな作品、それらに的を絞ったのが本書であるからだ。
今回は、表紙に遊びはありません。そのかわり、カラー口絵として8ページを足してもらいました。今回も「I Love Jazz Test」がベースになっています。それであるときからインタヴューをした記念として、CDのジャケットにメッセージ入りのサインをもらうことにしました。みなさん、いろいろな感想を書いてくれたので、その一部を紹介しようということで口絵ページを設けました。なかなか綺麗な仕上がりになっています。
現在は、来年出版する本の執筆に取り掛かっています。実はすでに3冊分が書き終わって、取り掛かっているのは4冊目です。といっても、その3冊も、原稿を出版社に渡しただけで、初稿のゲラが出来るのを待っているところです。
母親が文字が読めて、まだぼくのことをちゃんと認識できるうちにできるだけ本を出したいと思っています。といっても、出してくれる出版社がないことには、いくらその気になっても無理な相談です。幸い、ありがたいことにいくつかの出版社が定期的に声を掛けてくれるので、お言葉に甘えさせてもらっています。それだけに、ぼくも期待に応えなくちゃ、という気持ちです。
今晩は青山の「Val」で10時から45分ほどDJをやってきます。選曲はしていません。何が出るか、自分でもわからない「暗闇鍋」方式です。目の前にあるCDを適当に持っていき、上から順にかけてみます。これがヘタに選んだよりいい曲順になることが多いんですね。iPodのシャッフルと同じです。