待ってましたの新作です。このところライヴ盤やベスト盤が続いて、ストーンズの新曲から遠ざかっていました。ベスト盤の『フォーティ・リックス』に4曲だけ新曲が入っていて、その「ドント・ストップ」がよかっただけに、今回の『ア・ビガー・バン』にはおおいに期待していました。
最初に聴いた印象は、ストーンズが『スティール・ホイールズ』のころまで誇っていたロック・バンドとしての力を取り戻した、ということです。よかった、よかった。
とにかくオープニングの「ラフ・ジャスティス」から飛ばしっぱなしです。8年前の『ブリッジズ・トゥ・バビロン』、その前の『ヴードゥー・ラウンジ』(何とあれから11年も経っているんですね)に感じていた煮詰まり感が払拭されて、ストレートなロック、そう、かつてのブリティッシュ・ロックが持っていたシンプルなバンド・サウンドが復活した感じです。
もちろん「昔の名前でやってます」ではありません。現役ばりばり、もっとも新しいロックンロール、ストーンズにしかできないロックが満載です。バラードもあればファンキーな曲もある。キースが2曲歌っているのも嬉しいことこの上ありません。
それにしてもミックの存在感は圧倒的です。決して上手くはないヴォーカルですが、何とも言えない味わいが、一層の個性となって迫ってくるんですね。独特の表現力とでも言うんでしょうか。こんな歌を聴かされてしまうと、このひとが過してきた年輪を感じずにはいられません。
ストーンズの素晴らしさはライヴ感にあると思います。そこが、ビートルズのように作り込まれたサウンドとは違う魅力を生み出してきました。そうしたスタイルが、今回は久々に切れ味鋭い輝きを放っています。
ストーンズ・サウンドの真髄が聴ける「オー・ノー、ノット・ユー・アゲイン」とか、ブルースの雰囲気に溢れたラストの「インフィニティ」なんか、最高にストーンズしているナンバーだと思います。ボブ・ディランの曲みたいに聴こえる「レット・ミー・ダウン・スロウ」もいいし、バラードっぽい「ストリーツ・オブ・ラヴ」も強い印象を与えてくれます。
ストーンズ健在はわかっていましたが、これだけ充実した内容のアルバムをつきつけられると、こちらもうかうかしてはいられません。何がうかうかしてはいられないかといいますと、10月3日にワシントンDCで彼らのライヴを観るからです。やりました! ネットで発売日にチケットを買ったんです。
これまでにもドジャース・スタジアムやマディソン・スクエア・ガーデンで、あるいは日本でも東京ドームや武道館で彼らのライヴは観てきました。いつもコンサート前から胸がおおいに高鳴っていたものですが、今回はこれまで以上に早くもがんがん高鳴っています。それも、この新作を聴いてしまったからです。
すでに彼らのHPなどでは、全米ツアーの模様がレポートされています。それらを見ても、ストーンズは快調そのものようです。
こんなアルバムが聴けたりライヴが観れたりするのですから、人生っていいなぁとつくづく思います。ストーンズにしろ、同じ時期にアルバムを出したポール・マッカートニーにしろエリック・クラプトンにしろ、還暦を過ぎたロッカーが元気です。彼らが今後どうなっていくのか、それを見守っていくのも楽しみです。