先日のクリスチャン・スコットもそうでしたが、昨日「ブルーノート東京」で聴いたチック・コリアとジョン・マクラフリンのファイヴ・ピース・バンドも「現代的な1960年代型バンド」でした。というか、こちらはふたりのリーダーがもろサマー・オブ・ラヴ世代ですから、最初からそのつもりで聴いていました。発売されたばかりのアルバムのジャケットからして、いかにものサマー・オブ・ラヴです。
こんなジャケット、いまどきないでしょ。ジェファーソン・エアプレーンか当時サンフランシスコに拠点を移していたアニマルズの世界じゃないですか。
レコードでマクラフリンのギターを初めて聴いたのは1969年のことです。あれから40年。その後のマハヴィシュヌ・オーケストラあたりまでのギター・プレイは、それこそ血沸き肉踊るものでした。ぼくはそのイメージをずっと引きづっていまにいたっています。
そして、そんな思いを十分に満足させてくれたのが昨日のライヴでした。古くて新しい。これぞ「現代的な1960年代型ジャズ」です。と、ひとり悦に入っていました。ただし、これはぼくの感性がそう思わせているだけですから、「現代的な1960年代型ジャズ」なんて存在しません。でもこういう感覚や思い、わかるひとにはわかってもらえるんじゃないかしら?
1年半ほど前にチックにインタヴューしたとき、「いまのままじゃジャズはだめになる。それを踏まえて自分に何ができるか。そんなことを真剣に考えている」という話をしてくれました。そのときに出たのが、マフラフリンとクインテットを結成するアイディアでした。
ふたりはマイルス・デイヴィスのバンドで共演した仲です。それがいまから40年ほど前のこと。その後はフェスティヴァルなどでほんなわずかな共演が記録されているにすぎません。ですからその話を耳にして、ぼくは飛び上がるほどわくわくしました。いったいどんな音楽をやるんだろう?
そして届けられたのがライヴの2枚組です。それを聴いて十分予習したつもりでしたが、ライヴを観たらさらに面白い展開が楽しめました。マクラフリンのギターは40年前に比べれば、凄みや勢いにやや衰えが認められます。それでも、いまだカッティング・エッジな響きとフレージングは圧巻でした。
ぼくの席は脇のほうでしたが、そこからだとマクラフリンの姿がよく見えましたし、チックはもっと近くだったので、臨場感もたっぷりです。それにしてもマクラフリンはかっこよかったですね。ああいうギターが弾きたくて、当時はずいぶん練習しましたが、とてもじゃないですがこの早弾きは真似できなかったです。
マクラフリンもチックもいつもの彼らです。このクインテットだからといって、とくに音楽性を変えることはしていません。それでもいつもと違う音楽に聴こえたのは、彼らの意識が違っていたからでしょう。こちらも、このバンドを聴くモードでステージに接しましたから、それも影響しているようです。
ふたりもよかったですが、それ以上に他の3人の張り切ったプレイも印象に残りました。ケニー・ギャレット、クリスチャン・マクブライド、そしてブライアン・ブレイドの、いつにない意気込みで演奏に挑んでいる姿に胸が躍りました。5人のメンバーに、この出会いはなにかを感じさせたに違いありません。
「いまのままじゃジャズはだめになる。それを踏まえて自分に何ができるか」
チックの言葉を改めて噛み締めてみました。回答はまだ出ていないでしょうが、こうしたプロジェクトをひとつひとつ積み重ねていけば、やがて素敵なものに実を結ぶかもしれません。
そうそう、ほかの回は知りませんが、昨日は「スペイン」が演奏されないチックのライヴを久々に観た夜でした。それから、今日は池袋のHMVで19時からチックとマクラフリンによるインストア・ライヴがあるそうです。ふたりのデュオも聴いてみたいですが、本業があるので行けません。残念!