昨日観てきました。このところ重い映画ばかりが続いています。今回は少しほのぼのできるかなと思ったのですが、予想に反してこれまた重い内容でした。
妻を亡くし世捨てびとのようになっていた大学教授が、ひょんなことからミュージシャンでシリア人の青年と知り合います。彼が演奏するのはジャンベというアフリカの打楽器。人生を諦めているようなところのある教授が、やがて少しずつ心を開き、この青年からジャンベを習い、一緒に公園で演奏するまでになります。
ところがこの青年があるとき逮捕されてしまいます。その結果、不法滞在であることから拘留され、シリアに強制送還されてしまいます。逮捕劇にしても、木で鼻をくくるような移民局のオフィサーにしても、ニューヨークならさもありなんという感じです。
ニューヨークって優しい反面、非常に冷たいというかひとを突き放すようなところがありますから。とくに9.11以降のニューヨークは外国人に対し、以前にも増して冷たくなった気がします。
このシリアの青年も犯罪につながる悪いことはひとつもやっていません。不法滞在なので強制送還はいたし方ないところですが、教授が移民局のオフィサーに向かって「アンフェア!」と叫ぶ気持ち、とてもよくわかります。
救いは、教授とシリア青年との、不器用だけれど心の通った友情、それと青年の母親(未亡人)と教授のプラトニックな恋愛感情が、映画をあと味のいいものにしていたことです。
宣伝によれば、アメリカで公開されたときは最初4館だけで、その後270館に拡大され、6週目にはトップ10に入ったそうです。「アンフェア」な気持ちをどこにぶつけたらいいのかわからない辛い映画でしたが、心に残る作品でもありました。
留学時代からの知り合いに、ニューヨーク在住のピアニスト、なら春子さんがいます。彼女もジャンベの魅力にとりつかれたひとりで、毎年のようにアフリカに行ってはジャンベを習っています。先月には東京でコンサートもありました。彼女からこの楽器の魅力を教えてもらっていたこともあって、「扉をたたく人」には特段の興味を覚えました。
ただし、邦題の意味がよくわかりません。原題は「The Visitor」。これはアメリカの市民以外の滞在者を指しての言葉だと思います。邦題は原題をそのまま訳したのかしら?
最後は息子を追って母親もシリアに帰ってしまいます。そうなれば、彼女もアメリカには戻ってこれません。教授とのほのぼのとしたロマンスもこれでおしまい。しかし、数年後に戻ってきて、アパートの扉をたたくのかな? これでハッピーエンドになるのかな? とか思いながら観ていたのですが、映画はふたりがわかれて終わってしまいました。ぼくとしては、そうなってほしいなと思いながら映画館を出たんですが。
さて、今日は自由が丘でのトーク・イヴェント。あんまり集まりはよくないようですが、とにかくみなさんと楽しめたらいいなと思っています。ひとつ、すごい秘密兵器も仕込みましたし。