ぼくの体内季節知覚メーターによれば、「東京ジャズ」の終了とともに秋がやってきます。以前は8月最後の週末に行なわれていた「マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァル」が終了すると秋の気配を感じたものです。ところが今年は、真夏の真っ盛りに「東京ジャズ」が開催されている感じでした。
でも、目いっぱい楽しみました。例年と違い土曜(4日)と日曜(5日)は午前11時からのスタート。「ちょっと早いなぁ」と思いつつ、3日目は家から会場まで歩きました。45分で着きます。まだ空が快晴になっていなかったこともあり、けっこう涼しくウォーキングができたのはよかった。でも、到着時には汗だくでしたけど。
2日目の土曜日は11時からエスペランサ・スポールディングのインタヴューが宿泊先のホテルであったため、そちらにウォーキングで直行。汗だくで彼女に会うわけにもいかないので、開始30分くらい前にホテルに着いて、一休みです。ミュージシャンにとっても11時のインタヴューは早いでしょう。
ライナーノーツを書いたのはぼくだよ(ヘッヘッヘ)。
この日は12時からマーカス・ミラーがN響と共演するので、インタヴューが終わったら、挨拶もそこそこにタクシーで会場へ。素晴らしかったですね。これぞNHKが主催しているフェスティヴァルならではのプログラムです。
ホール開催のフェスティヴァルですが、ぼくは野外で行なわれているフェスティヴァルと同じ感覚で、観たいプログラムだけ観て、それ以外は野外ステージで行なわれている無料のライヴをのぞいたり、近くのスタバで休憩したり、知り合いや友人と食事をしたり、近くをブラブラ歩いたり、つまり「東京ジャズ」を中心に丸の内を楽しんでいました。こういう時間のすごし方も悪くないです。
印象に残ったステージの第1位は最終日の夜に登場した渡辺香津美のTO CHI KA 2010。これは期待していた以上の内容で、思いはいっきに30年前に。レコーディングと同じメンバーが全員顔を揃え、当時のレパートリーを現代的なヴァージョンにして演奏する。香津美さんのプレイは別格でしたし、これだけのメンバーを従えての堂々たるリーダーぶりに大感激。すごいことだと思いました。
それと、「やったぁ!」と何度も心の中で叫びながら観ていたのが、最終日昼の部のオープニングを飾った寺久保エレナのステージ。18歳とは思えぬプレイと呆れるばかりに完成された姿が圧巻でした。ウイントン・マルサリスを初めて観たときに近い興奮を覚えたという感じかな?
初日のクリスチャン・スコットもよかったです。2日目は、マーカス+N響のほかに、同じ昼の部で演奏したラリー・カールトン&松本孝弘の共演も、「ブルノート東京」で観たときとは違うスリルを感じました。やっぱりこのふたり、相性が抜群ですね。
2日目の夜の部のTOKUと塩谷哲のデュオもいつもと違う味わいをTOKUのヴォーカルから感じました。ロバータ・フラックは1曲目から「やさしく歌って」を披露し、これまた「ブルーノート東京」で聴いたときとは違う楽しさがあってよかった。
3日目は、TO CHI KA 2010の前のジョシュア・レッドマン・トリオも迫力と勢いに溢れていて最高でした。そうそう、昼の部の途中、会場を抜け出して野外ステージで聴いたダヴィッド・ラインハルトもよかった。このひとは、演奏終了後にインタヴューもさせてもらいました。
ジャンゴ・ラインハルトのお孫さんです。本人はジャンゴの孫といわれるのがお嫌だそうですが、「おかげで日本にも来れたのはいいことだ」なんてことも言ってました。
好きなのはウエス・モンゴメリーのようで、そういうスタイルも感じられるのですが、そこにジャンゴ的なノリとパッセージも加わっていると見抜いたぼくは、そのことを指摘。「これぞあなたならではのスタイルじゃないですか」と言ったら、24歳のダヴィッド君、まんざらじゃない様子でした。
そう言われて嬉しかったのか、最後に目の前で「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」を弾いてくれました。これ、彼は何も言わなかったけれど、バーニー・ケッセル風。ぼくにはちゃーんとわかっちゃうんです。元ギタリストですからね、エヘン。それで、わざとそんなことをやってみせるダヴィッド君。そこがお茶目だなぁと。
そんなこんなで楽しい3日間も終わりました。健康に気をつけて、来年もこのフェスティヴァルを楽しまなくちゃね。