
「JAZZ WEEK TOKYO 2013」は今年から始まった都市型のジャズ・フェスティヴァルとでもいったらいいでしょうか。単独アーティストによるコンサート形式で、今回は22日から27日までの6日間で6組のアーティストが登場。

ぼくがどうしても観たかったのはウエイン・ショーター。先月発売された新作ライヴの『ウィズアウト・ア・ネット』が素晴らしかったことと、久々のライヴが観られることとで、これは絶対に落とせない。期待大で渋谷ヒカリエ内にある「東急シアターオーブ」に行ってきました。

ショーターは今年の8月で80歳。とてもそんな歳とは思えないアグレッシヴで創造的な演奏を新作でも聴かせてくれました。ただしこの新作が録音されたのは2011年のこと。それから2年ほどがすぎた現在、果たしてどのような演奏と音楽を聴かせてくれるのか?
ダニーロ・ペレス、ジョン・パティトゥッチ、ジョナサン・ピンソンのリズム・セクションを従えたショーターは貫禄充分。そして堂々たるプレイで圧倒的な存在感を示しました。
ぼくはありがたいことに前から4列目のほぼ真ん中の席で観ることができました。相変わらずのちょっとした仕草が茶目っ気を感じさせます。
ショーターは生粋の即興演奏家です。その場で思い浮かんだことをどんどん音に出していきます。曲ごとに大枠はきまっているのでしょうが、それ以外は4人がそのときに思いついたプレイを自由にやってみせる。
これはウェザー・リポートの手法でもあります。彼がいまだにそうやって、その場で次々と創造的なプレイを生み出していく。その姿を間近に観ることができて、ぼくはとても触発されました。
予想していたこととはいえ、年齢を超越したプレイは現代のジャズにおける最先端に位置するもの。この創造性の源はどこにあるのでしょう?

マイルスもこの世を去るまで前進し続けましたが、弟分的なショーターもまったく負けていません。というか、マイルスは65歳でこの世を去ってしまいましたから、ショーターがいまなおジャズの先頭に立ち、前人未到のプレイを継続していることには驚くほかありません。そしてその姿に感動しました。
昨日のコンサートを観ながら思っていたのはマイルスの遺伝子について。ショーターはいまもマイルスに端を発した音楽を追求することで、おのれの理想を具現化しようとしている──そう思えてなりません。このことはマイルスのグループに参加した全員が、程度の差こそあれ同様なんじゃないでしょうか。
イージー・リスニング的な軟弱ジャズも嫌いじゃありませんが、ショーターが聴かせてくれたハードで創造的な演奏も大好きです。ぼくはおおいに刺激をされて会場をあとにしました。

【出演メンバー】
Wayne Shorter(ts, ss)
Danilo Perez(p)
John Patitucci(b)
Jonathan Pinson(ds)
2013年3月24日 渋谷「東急シアターオーブ」