1950年代なかばに登場したモード・ジャズは、1960年代になって新主流派ジャズとして一般的なスタイルにまで普及する。しかし、その後は提唱者のマイルス・デイヴィスがフュージョンやファンク路線を歩むことで、新主流派ジャズの流れがストップしてしまう。その状況が一変したのは、1980年にウイントン・マルサリスがニューヨークのシーンにデビューしてからだ。
フュージョン全盛の時代に、ウイントンは伝統的な4ビート・ジャズに若者らしい感覚を盛り込み、センセーションを巻き起こす。若さに似合わぬ成熟したテクニックを誇るプレイが大きな話題を呼んで、彼への注目と共に4ビート・ジャズに対する再評価の機運が高まったのである。
★キーパーソン:ウイントン・マルサリス
ウイントン・マルサリスはジャズ発祥の地ニューオリンズから若干19歳でニューヨークに進出して、あっと言う間にジャズの流れを変えてしまった。年齢からは考えられないほど成熟した演奏と完璧なテクニック。それらを武器に、彼はフュージョン全盛の時代に伝統的なスタイルのジャズを演奏することで極めて大きな反響を巻き起こす。
無名の新人だったウイントンがわずか1年でリーダー作を発表し、それがグラミー賞を獲得したことからも凄さはわかる。そしてその後は、彼に続けとばかりに有能な若いミュージシャンが4ビート・ジャズを演奏するようになっていく。
加えてフュージョンに転向していた中堅~ヴェテラン・ミュージシャンまでが再び4ビート・ジャズを演奏するようになってきた。これらの動きによって、1980年代初頭から4ビート・ジャズはまったく新しい局面を迎える。