2006-04-09 「思い出のグリーン・グラス」
昨日は森山良子さんのコンサートに行ってきました。渋谷の「オーチャード・ホール」で3日間、その中日です。場内は満員の盛況で、森山さんがいまも安定した人気を誇っていることに嬉しく思いました。

森山さんは学校の1年先輩です。高校時代には学園祭などで同じステージに立ったこともあります。当時は(1960年代半ば)、大学生を中心にフォーク・ソングの大ブームでした。ぼくが通っていた学校は幼稚園から大学までの一貫教育で、大学では黒沢久雄さん(黒澤明の息子さん、知ってますよね?)が中心になったブロードサイド・フォーが大人気でした。
森山さんは高校生でしたが、ブロードサイド・フォーのマスコット・ガール的存在でフィーチャーされていたんです。そのころは、あちこちの大学にフォーク・バンドがあって、マイク真木のモダン・フォーク・カルテットとか、フォー・ダイムスとかのグループが人気でした。
それでこういうグループを中心にフォーク・バンドが10組くらい集まっては、毎週末にどこかでコンサートを開いていました。それも厚生年金会館や渋谷公会堂など、3000人規模のホールが満員になるコンサートを学生たちが主催していたんですから、いかに人気があったか、わかってもらえるでしょうか。
そんな中で、森山さんは高校生ながら大スターでした。当時は“和製ジョーン・バエズ”などと呼ばれていたことを思い出します。たしかジョーン・バエズが来日したときも、共演したと思います。それで、そういうコンサートでは最後に必ずシングアウトとかフーテナニーといって、出演者全員がステージで「ウィ・シャル・オーヴァー・カム」や「わが祖国」といった曲を、お客さんと一緒に歌うのがならわしでした。
森山さんのステージを観ながら、そんな昔のことを思い出していました。彼女がひとりでギターを弾いて歌う「さとうきび畑」から始まったコンサート。フル・コーラスをじっくり歌う姿に、その昔、舞台でジョーン・バエズのように「ドナ・ドナ」を歌っていた彼女のことが心に浮かんできました。
そして、2曲目が「思い出のグリーン・グラス」。ステージで森山さんも紹介していましたが、これは高校を卒業してプロ・デビューした彼女がナッシュヴィルで録音した『森山良子イン・ナッシュヴィル』に入っていた歌です。日本ではトム・ジョーンズの歌でヒットしていました。
あのころ、アメリカでレコーディングするのは“大事件”でした。しかも、カントリーの本拠地ナッシュヴィルで一流のミュージシャンをバックにカントリー系のアルバムをレコーディングしてきたのですから快挙と呼んでいいでしょう。
発売されるや、渋谷の「ヤマハ」で買ったことを覚えています。中でも「思い出のグリーン・グラス」がフェイヴァリットで、それ以来ことあるたびにこのレコードを聴いてきました。iPODを買ったときにも、真っ先にiTUNEに入れたCDのうちの1枚です。
その「思い出のグリーン・グラス」が、レコーディングから40年近くたったいま、相変わらずの澄み切った歌声で「オーチャード・ホール」に響きわたりました。そうそう、忘れていましたが、今回のリサイタルはデビュー40周年を記念してのものです。
書きたいことは沢山あるのですが、長くなるので最後にもうひとつだけ。
コンサートのラストで「30年を2時間半で」というドラマ仕立ての歌がうたわれました。内容は、どちらもいまはひとりものになっている昔の恋人が30年ぶりに偶然出会い、最初は喫茶店、次はホテルのバーで思い出を語り合う内容です。
それで思ったのですが、リサイタルという形でないステージには何度か接していましたが、森山さんのリサイタルを観たのは35年ぶりぐらいなんですね。まさに「2時間半」のコンサートで、いっきにぼくは昔に戻っていました。そんなことを感じさせてくれるコンサートはそうそうありません。森山さんにとっての40年、長いようで短かったんでしょうね。その道程を凝縮したような素敵なコンサートでした。