この映画、見た目の派手さは別にして、内容に重いものがありました。こういう映画、好きですね。宝石業界の裏を暴いた話ですが、関連業界からよく横槍が入らなかったものだと思います。それとも実際は大変だったのでしょうか?
ディカプリオがよかったです。しばらく前に観た『ディパーテッド』は、ストーリーも彼もいいとは思いませんでした。これまでもディカプリオが出た映画はたいていが期待はずれで、まあまあ面白いと思ったのは『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』ぐらいで、『アヴィエイター』もがっかり物でした。もっとも話題になった映画をときどき観ているだけなので、偉そうなことはいえないのですが。
それで、この映画です。ぼくはすっかり見直しました。というか、ディカプリオもそれなりの年齢になってきたんだということでしょうか。それでも、ただ年齢を重ねればいいというものじゃありません。どういう歳の取り方をしていくか。それが役者なら演技に出てくるでしょうし、ミュージシャンなら音楽に現れてきます。そういう意味で、それなりにいい歳を取ってきたと感じました。
憂い顔のジョニファー・コネリーも好みです。華やかさには欠けますが、こういう役にはぴったりでした。大好きな『ワンス・アポン・ア・イン・アメリカ』に出ていた少女ですよね。こんなになっていたんだという驚きと懐かしさを感じながら観ていました。あれから何年が過ぎたんでしょうね?
今年のアカデミー賞で5部門にノミネートされたのも頷けます。主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、助演男優賞(ジャイモン・フンスー)、あとは編集賞、音響効果賞そして録音賞ですが、納得です。
それにしても、悲惨な映画です。いかなる主義や主張も、内戦という形で肯定されるとは思えません。同じ民族が、そして兄弟や家族が敵同士になって殺しあう現実。ダイヤモンド発掘の実態とそうした政府対反政府の争いなどが軸になって話は進んでいきます。
現実を知らないぼくには、戦闘シーンがどれだけ真実に近いのか、あるいはまったくのフィクションなのか、わかりません。ですが、少なくとも無益な殺戮がアフリカ、そしてこの映画とは関係ないですが、世界中のあちこちでいまも行なわれていることは真実です。そういう不条理についても、改めて考えさせられました。
ぼくが一番心に残ったシーンは、親しくなった女性ジャーナリストのマディー・ボウエン(ジェニファー・コネリー)を残して、発掘場にダニー・アーチャー(ディカプリオ)とソロモン・バンディー(ジャイモン・フンスー)が向かう場面です。
バンディが隠したダイヤにたどり着くためには、さまざまな困難が待ち受けています。生きては帰って来れないかもしれない。そう思い、アーチャーはボウエンを安全な地に向かう飛行機に乗せます。
このとき心に浮かんだのが南佳孝さんの「冒険王」でした。こちらは『インディー・ジョーンズ』あたりをヒントに歌詞が書かれたのでしょう。聴くたびにほろりとさせられる「冒険王」の歌詞とメロディが、このシーンから映画が終わるまで、ずっとぼくの心に浮かんでいました。
密林に浮かぶ月
川岸の野営地で
手紙を記すよ
「元気だ」と書きながら
もう二度と逢えぬかも
知れないと想う
伝説の魔境に
明日旅立つ
古い地図を胸に抱いて
黄金卿(エルドラド)探す
君を愛してる
わかるだろう
もしも帰れなくても
泣かないでくれよ
黒豹の瞳が
闇を走る
案内人(ガイド)さえも震えあがる
禁断の国へ
君を愛してる
わかるだろう
もしも帰らなければ
忘れてくれよ
忘れてくれよ
(作詞:松本隆)
最後近くにアーチャーがボウエンに電話をかけます。そこからエンド・ロールまでが心に染み入りました。こういう役にディカプリオがよく似合っています。そして、日本に生まれた自分がどれだけ幸せかを思いました。