
ここしばらく、年末に出す予定の本の原稿を書いています。河出書房新社から出した『ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100』と『ジャズマンはこう聴いた! 珠玉のJazz名盤100』の続編にあたるものです。今回は、いわゆる誰もが名盤と考えるアルバムではなく、隠れ名盤的なものにスポットを当てています。
とはいっても、ぼくしか知らないアルバムを聴いてもらっても会話が成立しませんから、そこは有名アーティストだったり、ある程度のジャズ・ファンなら持っているはずのアルバムが中心です。さらにいうなら、コメントをもらっていなければ本は書けませんから、結局はそこそこの名盤にはなってしまうんですが。

最初に買うアルバムではありませんが、そのアーティストが気になったら2番目、3番目(いやぁもう少しあとかな)に買うような作品と思っていただければいいと思います。もっとも選んでいるのはぼくですから、とどのつまりは自分の好きなアルバムということになるのですが。

例をあげると、こんなアルバムです。
『アイク・ケベック/春の如く』(Blue Note)
『アート・ファーマー/モダン・アート』(United Artists)
『アート・ペッパー/ゴーイン・ホーム』(Galaxy)
『アルバート・アイラー/ラブ・クライ』(Impulse)
『ウェザー・リポート/ライヴ・イン・トーキョー』(Sony)
『エリック・クロス/トゥ・ヒア・イズ・トゥ・シー!』(Prestige)
『オーネット・コールマン/ヴァージン・ビューティ』(Epic)
『カーティス・フラー/ニュー・トロンボーン』(Prestige)
『カーラ・ブレイ/ライヴ!』(ECM/WATT)
『グラント・グリーン/抱きしめたい』(Blue Note)

アート・ファーマーあたりは名盤中の名盤ですが、そこはあまり堅苦しく考えないでください。そもそも思いつきですべてを進めているので、これも急に紹介したくなって入れてしまいました。ジャズと同じでアドリブ人生です、はい。

これまでの本も含めて、原稿の半分くらいは『スイングジャーナル』誌で20年くらい連載していた『I Love Jazz Test』が元になっています。それで気がつくのが遅かったんですが、あるときから思いついてゲストのアーティストからサインをもらうようにしました。
『I Love Jazz Test』は200回以上連載しました。サインをもらうようになったのは最後の70回くらいです。最初からもらっていれば、かなり貴重なコレクションになったと思います。残念ですが、そういう発想がなかったんですね。コレクターなのに、どうしてなんでしょう? 自分でもわかりません。
これまでにインタヴューはこの何倍かやっています。そういうときにもサインはまずもらっていません。雑誌のプレゼント用とか、友人に頼まれてもらったものはあります。そんなときにぼくも、というケースはありましたが、いずれにしても滅多にもらったものはありませんね。マイルスは数少ない例外です。

それで今回の本を書いているときに、口絵にでも使ってみようかなと思って、サインをしてもらったCDジャケットを取り出してみました。ひとつひとつに想い出があります。あのときはこんな話で盛り上がったとか、このときはこんな意外な話が飛び出してきたとか。
目に見える記録は、サインにしても写真にしても、あとになってみると大切な宝物になりませね。インタヴュー・テープも、いまとなっては貴重な財産です。この世にいないひともたくさんいますし。それこそ、ラジオ番組でもあればこういうテープも紹介できるんですけれどね。