
今年はボサノヴァ誕生50周年ということで、11月にはジョアン・ジルベルトがやってきますし、レコード会社からもいろいろなボサノヴァの作品が登場しています。ボサノヴァからジャズに入ったぼくとしては、なかなか胸のわくわくする1年でもあります。
そういうわけで、今日はボサノヴァのアルバムを中心に、最近のお気に入りをいろいろ紹介しておきます。聴きたい作品が次々と出てくるので、そうでもしないと、そのうち忘れてしまうかもしれません。ですから、自分用の忘備録みたいなものと思ってください。

『イリアーヌ/私のボサノヴァ』
イリアーヌはこれまでにもボサノヴァの作品を発表していますが、これもかなりいいですね。1曲目の「イパネマの娘」。正攻法で歌っていますが、妙な小細工がなくて最高です。ストリング・オーケストラの響きも美しいですし。
ぼくは、彼女がニューヨークに移ってきたころのライヴを何度も観ています。そのときはステップス・アヘッドの新メンバーだったんですが、あの彼女がいまではこういう風になったことに感慨を覚えます。

『ミルトン・ナシメント&トム・ジョビン・トリオ/ノヴァス・ボッサス』
これはアントニオ・カルロス・ジョビンにトリビュートしたアルバム。息子のトム・ジョビンとミルトン・ナシメントの共演は、オーセンティックなボサノヴァの響きを残しながら、ナシメントらしいモダンなテイストも反映されたもの。ジャケットはダサいですが、内容は最高です。
ナシメントはポートランドのコンサート会場で初めて聴きました。バブル真っ盛りのこのときは、パリ、ポートランド、ワシントンD.C.、ニューヨーク、ウッドストックなどを取材で回ったんですが、あの時代は企業がたくさんお金を持っていたんですね。あんなにお金のかかった取材旅行は二度とないでしょう。懐かしい!

『ローラ・アン/サマー・サンバ』
ローラ・アンはアメリカ生まれですが、イタリアやブラジルに住んでいたことがあり、両国の言葉も流暢ということです。これはそんな彼女のデビュー作。内容は、タイトル曲をはじめ、「ジンジ」、「デサフィナード」、「トリステ」などお馴染みのものが中心で、ちょっとハスキーなヴォーカルがいい味を出しています。

『カレン/アルアンダ』
このひとは日本人なんでしょうか? ジャケット写真からすると、どうでしょう、国籍不明ですね。日本制作のアルバムですが、かなりいいです。タイトル曲ではカルロス・リオとデュエットしています。ほかにもいい曲がたくさん入っています。選曲のセンスにも感心させられました。

『ハリー・アレン/ボサノヴァに乾杯』
今度はインスト物です。テナー奏者のハリー・アレンもこれまでにボサノヴァの作品をいくつか発表していますが、これもいいですね。もともとスタン・ゲッツみたいにサックスを吹くひとですから、ボノサヴァにはぴったりの人選です。渋くてクール、しかもウォームでノスタルジック。スタン・ゲッツのボサノヴァを形容するときに使う言葉がすべてこの作品にも当てはまります。こうなったら、どこかに引っ込んでいるアストラッドとの共演盤も作ってくれないかしら。

『スティーヴ・タイレル/バカラックへの誘い』
ここからはボサノヴァではありませんが、最近よく聴いているヴォーカル作品です。ボサノヴァと並んでバカラックも大好きなので、このアルバムは出る前から気になっていました。渋い大人のジャズ・ヴォーカルで、こういうの、ぼくは大好きです。

『ダイアン・リーヴス/ラヴィン・ユー』
いまやすっかり大御所になったダイアン・リーヴスの新作にもいい曲がたくさん入っています。ここでも1曲ジョビンの「過ぎし日の恋」が取り上げられていますし、「風のささやき」はルグランの映画音楽ですね。『華麗なる賭け』のスティーヴ・マクイーンとフェイ・ダナウェイが懐かしいです。昨日は、iPod touchで『ブリット』を観ていました。

『カサンドラ・ウィルソン/ラヴァリー』
やっぱりブルーノートって凄いですね。ダイアン・リーヴスもこのカサンドラ・ウィルソンもブルーノート所属なんですから。しかも、一度契約すると、しつこいほど長期にわたって作品を発表し続けるケースが多いでしょ。こういうところも、ぼくは素晴らしいと思うんです。で、このアルバム、カサンドラによる久々のスタンダード集です。これもダイアンの作品と同じで、ジャズ・ヴォーカルのいまを知る上で最高の1枚だと思います。